銀嶺の果て

(1947年、東宝、89min モノクロ)


銀嶺の果て  この作品を初めて見たのは学生時代、池袋の文芸座地下の名画座でした。当時は、家庭用ビデオなどない時代で、名画座で出会う過去の映画に、すごく新鮮な感動を受けていました。作品に対する思い入れや、見方も、今よりずっと真剣だったと思います。そんな意味でも、今も心に残っている一本です。

 冬の北アルプスに三人の銀行強盗(志村喬三船敏郎小杉義男)が逃げ込みむ。追っ手を逃れ、一行はさらに山奥へと向かう。途中、小杉は雪崩に呑まれ死に、志村と三船は山小屋へとたどり着く。

 電話もない山小屋には、老人と孫娘、登山に来た青年がおり、二人を歓迎する。山小屋の純朴な人たちに接するうち、リーダー格の志村は次第に人間らしい気持ちを取り戻し始める。

 志村と三船は山超えのため、青年に道案内をさせる。険しい道中、何度か志村と三船の危機を助けた青年は腕を骨折し、重態となる。あくまで冷酷な三船は邪魔になった青年を殺そうとするが、青年に恩義を感じた志村との死闘の末、崖下に転落する。

 「なぜ、自分の身を犠牲にしてまで強盗である俺たちを助けたのだ」と聞く志村に、青年は「山の掟でザイルは切れないのだ」と答える。
 志村は重態の青年を背負うと、警官隊の待ちうける山小屋へと下山して行く・・・

 監督は谷口千吉で、脚本を黒澤明が担当しています(『山小屋の三悪人』というタイトルでシナリオ集の『全集 黒澤明 第二巻』に収録されています)。山岳青年がいい人すぎる気もしますが、ストーリーが単純明解、骨太でダイナミックなところは、往年の黒澤作品をほうふつとさせます。

 僕にとっての山小屋やスキーに対するイメージは、この作品によって形作られた部分が大きいようで、スキーを始めた頃のこととこの作品が今もだぶって思い出されます。

(2006.03)

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