ロンゲスト・ヤード

(The Longest Yard (The Mean Machine) 1974 米 121min)


ロンゲスト・ヤード  この作品を初めて見たのは高校生の頃でした。体中の血が沸き立つような衝撃と感動を受けたことを今でも覚えています。

 刑務所での、囚人チームと看守チームのフット・ボール試合を扱った本作品、ロバート・アルドリッチ監督が本領を発揮しており、ゴールデン・グローブ賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞しています。

 元プロ・フットボールの花形選手ポール・クルー(バート・レイノルズ)、彼は八百長試合をした過去があり、今は金持ち女のヒモ暮らし。その女の車を失敬した事でポールは刑務所行きとなる。

 刑務所の所長(エディ・アルバートが好演)は大のフットボールマニアで、看守によるセミプロチームを持っている。チームのリーダーでもある看守長クナウア(エド・ローター)にとっては"スーパースター"ポールの存在が目障りである。

 所長の要請でポールは囚人チームの育成をすることとなる。曲者揃いの囚人の中にはリチャード・キール(後に007シリーズの"ジョーズ"役で人気者に)の姿もあります。

 映画前半は男臭くもコミカルに展開、そして映画後半、両チームの試合開始となると、画面はうって変わって躍動感が溢れます。マルチ・スクリーンが実に効果的に使われており、競技場の臨場感がみごとに伝わってきました。

 試合前半はポールをリーダーとする囚人チームが優勢で終了。一計を案じた所長はポールを呼び出し、後半戦は大差で負けるよう強要する。さもないと、看守を殴った罪で三十年の刑にすると。

 ここで主人公の心の葛藤があり、ポールは我が身かわいさに試合を投げ出してしまう。
 やがて点差は看守チームが大幅にリードとなり、看守たちは囚人たちを痛めつけ始める。残り時間も少なくなってきた時、ついに決心したポールは再び、グラウンドに舞い戻ってゆく。

 クライマックス、試合終了前ラスト七秒間の逆転劇は、スロー・モーションとストップ・モーションを多用した演出が迫力満点で、思わず画面に引き込まれてしまいました。

 この作品、やたらと”キンタマ”という言葉(字幕)が飛び交う映画でもありました。英語では"Balls"と言ってました。中でも「看守たちがいくら俺たちを痛めつけても奪えないモノがふたつある。そいつはキンタマだ」というセリフは和田誠氏も『お楽しみはこれからだ』にとりあげています。TV放映(12チャンネル)では、このセリフ、”キンタマ”が”耐えることと、諦めないこと”に置き換えられていましたが、そういう解釈もあるのか、と思ったものです。

 そして、この作品の主人公がすべてをなげうってまで守ろうとしたもの、それがまさに”キンタマ”だったのではないでしょうか。所長に屈し去勢された生き方をするよりも、どんなしうちを受けようとも男であり続けることを選んだということです。
 公開当時、”管理社会への反発”とうたわれた本作品、ここのところが、僕にはグッときたのですが、サラリーマンになってからも、心の奥にくすぶっていたテーマと言えそうです。

 日本版ビデオの音楽についてですが、冒頭、レイノルズが金持ち女からかっぱらった車のラジオから流れる ”サタデー・ナイト・スペシャル” は無音に、ラストを飾る ”You gotta be a Football Hero” は ”聖者の行進” に変わっていました。僕はラストに流れるこの曲が大変気に入っていただけにビデオで見た時にはとても残念でした。
 尚、DVD版では音楽はちゃんとオリジナルのものが使用されていますのでご安心を。

 原題について、公開当時は"The Mean Machine"だったと記憶しているのですが、ビデオ化以後は"The Longest Yard"となっています。

 「ミーン・マシーン」(Mean Machine 2001 米 監督バリー・スコルニック)は本作のサッカー版リメイク。
 また、フットボール版リメイクも公開間近で、こちらはバート・レイノルズも囚人チームの一員として出演しているようです。

(2005.05)

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